農機具 稲作編その1

稲作で必要な農業機械には、トラクター・自脱型コンバイン・バインダー・ハーベスタ・乾燥機・籾摺機・自動選別計量機・動力散布機・刈払機等があげられる。

 

・トラクター

    牽引車の意味で,作業機などを引っ張って各種の作業をする動力車のことである。動力取出装置を通じて作業機に回転力を伝え,作業機を駆動して複雑なしごとをさせる移動動力源としての意味が大きい。農業用,林業用,工業用,軍用などの区別があるが,数のうえでは農業用が中心である。 トラクターには車輪式のものと履帯式(キャタピラ式)のものがある。車輪式は道路でも走れ,しかも高速運転に適している。

 

・田植機

   苗箱にマット状に栽培されたイネ苗を機体の進行につれて水田にさし込んでいく機械。田植は稲作上最も過重な労働であるが,水田での微妙な作業であるため,機械的な単純化は容易でなかったが,昭和30年代に農村の労働力が都市に吸収されたため田植作業の省力化が必要となり,実用的な田植機が作られたらしい。

 

・コンバイン

    稲や麦などの穀物の刈取り,脱穀をあわせ行う機械。圃場を進行しながら刈取りと同時に脱穀選別を一貫して完了できるもので,農業機械のうち最も複雑,大規模,能率的なものである。日本では,1962年に農業構造改善事業が実施されて以来,平野部の稲作地帯にこの種の小型コンバインが採用されるようになった。日本独特の超小型コンバインとして,穂刈型コンバインや自動脱穀機を応用した自脱型コンバインがある。

 

・乾燥機

    収穫した穀物の乾燥を人工的に行う機械。適期に収穫した穀物には、水分が米で24%、小麦で28%程度残っており、貯蔵性向上や品質の保持のために、米で15%、小麦で12.5%まで乾燥させる必要がある。水分20%の米を堆積(たいせき)したまま放置しておくと4時間でカビが発生するため、収穫後の乾燥は非常に重要な作業である。かつては株元から刈り取って、圃場で自然乾燥させたのちに脱穀していたが、刈取り時に脱穀を行うコンバインの普及(1970年以降)により、1999年(平成11)には92%の農家が穀物乾燥機を利用するに至った。
 米の自然乾燥は天候や地形の影響を受け1か月以上かかる場合もあるが、人工乾燥では全国どこでも12時間程度で乾燥できる。しかも水分のばらつきも少なく、均質な穀物生産が可能となる。乾燥方法としては、均平に堆積された穀物に常温または加熱された空気を送る方法がとられ、加熱空気を通風するものがほとんどである。加熱空気は灯油等の化石燃料を燃焼した熱風を外気と混合し通風する。過度な高温による急速乾燥は、穀粒に亀裂が入る胴割れや、脂質、デンプンの変質を招くため、加熱空気の温度は外気温度にもよるが40~50℃で、乾燥速度は毎時0.8%前後である。
 構造には、穀物を動かさない静置式乾燥機、穀物を循環させる機構を持つ循環式乾燥機、穀物を連続的に供給し乾燥されたものを連続的に排出する連続送り式乾燥機がある。日本では1953年(昭和28)に静置式乾燥機が開発されたが、コンバインの能力向上とともに狭い設置面積で大量の米を乾燥させる必要が生じてきたため、循環式乾燥機が独自開発されてきた。そのため、循環式乾燥機の割合が非常に多い。循環式乾燥機は自動化が進められ、水分計、温度計等の種々のセンサーでモニタリングしながら乾燥制御が行われている。また、風圧センサーや耐震センサー等の安全装置も充実している。
 また日本では、第二次世界大戦前から研究されてきた輻射伝熱(ふくしゃでんねつ)を利用した遠赤外線乾燥機が、1998年に実用化され、2013年(平成25)の時点で市場の約4割がこの乾燥機に入れ替わっている。循環式乾燥機を改良したもので、灯油の燃焼熱の35~55%を遠赤外線に変換して照射するとともに排熱も利用するため、加熱空気だけのものに比べ、10%以上省エネルギーである。
 ちなみに、穀物乾燥機の処理能力を示す単位には、尺貫法の単位である「石(こく)」を用いる。この場合「1石=100キログラム」である。たとえば、「60石の乾燥機」といえば「6トンの穀物が処理できる乾燥機」を表す。

 

・籾摺機

    籾を玄米と籾殻とに分離する機械。古くは臼と杵によって籾摺りと精米が同時に行われたが、元禄年間(1688~1704)に中国から土臼、唐臼、磨臼が伝来して、大正年代まで籾摺り作業に用いられた。現在は、回転差を有する2個のゴムロール(直径20センチメートル程度)の間(1ミリメートル程度)に籾を供給し、玄米に損傷を与えない程度に籾に圧迫摩擦作用を与えて90%程度脱する方式が主流である。脱後は、籾殻や粃(皮ばかりで実のない米)を風選装置(唐箕)によって取り除く。このゴムロール式脱機の発明は明治中期のことで、大正初期には、遠心力により籾に衝撃を与えて脱する遠心式脱機が考案されたが、その性能はゴムロール式に及ばなかった。
 脱しきれなかった籾を玄米と仕分け選別する方式には、揺動式、回転式、万石通の3通りがある。揺動式は穀粒の流動特性を生かし、傾斜した粗面板を揺動してその上を流下させて選別する。回転式は円筒状の粗面板内を流下させる方式である。万石式は穀粒を金網篩によって、籾は網上、玄米は網下に流下させる方式で、このいずれかを組み込んだものが全自動籾摺り機である。選別された籾は、ふたたび脱機へ送られる。能率はゴムロール幅にほぼ比例し、1時間に600~1000キログラムの玄米を摺り出す。なお、籾のときの重量に対する摺り出された玄米の重量割合を籾摺り歩合といい、通常80%内外の値を示す。

 

 

 

 


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[参考サイト]

コトバンク、ヤンマー、井関農機、クボタ、三菱農機